準備は万全に

 近くで拾った、適当な木片をナイフで削りながら、炎の向こうで食材を切り刻む相方の小さな手を思い浮かべる。
 家事も仕事も趣味も、何をやらせても器用。更に、どんな動作も、あいつがやるとさまになる。持ってきた野菜と肉を適当に切って、火に掛けた鍋に入れているだけなのに、手元を忘れて見惚れてしまう。だが、妙なところでポカをやらかすのが、この相方の唯一の弱点。今日のキャンプでも。
「カレーできた。スプーンできた?」
「ていうか荷物にスプーン入れ忘れるなよ!」
 手近の木の棒で飯盒を叩き、スパイス投入済みの鍋を乱暴にかき混ぜ始めた相方に、俺は肩を竦めてから、スプーンの制作に戻った。
 

(終)
2015.8.17.  風城国子智(作者の現状と若干の注意)

WindingWind 風城国子智