絵を描く人

 薄暗い木々の向こうに見える眩しい丘と、その丘の上に立つ細い影に、目を細める。
「どうした、少年?」
 林を出、おずおずと丘を見上げた少年に降り注いだ快活な声に、少年は一瞬で身の置き場を無くした。
「雨、降るって、ばあちゃんが」
 それでも何とか、細い影が持つ大振りなスケッチブックに、別荘の下働きをしている祖母の言葉を告げる。
「分かった」
 頷いて、しかし鉛筆を持つ手を止めようとしない細い影に、少年は小さく息を吐いた。
 別荘から遠く離れたこの場所で毎日何かを描いているその人のスケッチブックを、覗き込んだことは無い。そんなに熱心に、一体何を描いているのだろうか? もう一度、細い影を眩しく見上げ、少年は首を横に振った。

(終)
2016.11.5.  風城国子智(作者の現状と若干の注意)

WindingWind 風城国子智