母の写真

 その写真を二度目に見掛けたのは、職場の先輩でもある彼の家に初めて招待された夜のこと。
 明るい並木道を背景に、何処か彼に似た若い男性の横で笑っていたのは、確かに、梓の母。
「それ、親父の若い頃の写真」
 梓の小さな息を聞いたかのように、彼が言葉を紡ぐ。
 この写真を同じものを、母はアルバムに隠してずっと大切にしていた。その事実が、梓を震えさせていた。

 華やかなざわめきに、息を吐く。
「親父、まだ喋ってる」
 今日は俺達が主役なのに。呆れたような彼の声に、梓は静かに微笑んだ。
 二人の斜め前では、梓の母と彼の父が、再会を喜び合っている。
 大学の先輩後輩だったという二人の、穏やかな雰囲気に、梓はもう一度、安堵の息を、吐いた。
 

(終)
2015.11.7.  風城国子智(作者の現状と若干の注意)

WindingWind 風城国子智