淡く、惑わす 300字SS『光』

 夜。時折、峻険な山の向こうが淡く光る。
 その光の理由を確かめる為に、ぼくは、住み慣れた小さな村を出た。

 岩しかない、何処かよそよそしい山肌を、どうにか登りきる。切り立った山頂の向こうに見えたのは、綺麗に磨かれた、茶色と灰色の石達。
 これが、あの光の原因? 傍の岩に尋ねる。
 夜になれば分かる。そう答えたのは、岩の上に佇む鳥。

 そして、夜。
 ぼくが見ている前で、闇に飲まれた石達が次々と、淡い光を発していく。その、幽かな光が集まって、冷たい空間に、ぼんやりとした光の雲が浮かび上がった。
 偽りの光だ。目を見張るぼくの耳に風が囁く。石は、石でしかない、と。それでもぼくは、揺らめく淡い光に目を奪われ続けていた。

 

(終)
2016.2.6.  風城国子智(作者の現状と若干の注意)

WindingWind 風城国子智