来る流転の/還る期節に 300字SS『別れ』

来る流転の
 気負いすら、感じることなく。
 気付いた時には、フィンの魂は、安らぎとともに仮の宿にしていたグレンの身体から離れてしまって、いた。どこを向いても、もう、グレンは見えない。僅かな寂寥感とともに感じたのは、安堵。
 もう、グレンは大丈夫。そっと、呟く。恩を仇で返され、祖父から受け継いだ楽園を失いはしたが、同じように虐げられた仲間達を見つけ、新しい居場所を得た。だから、大丈夫。もう、フィンを探して、危険な場所に何度も舞い戻ることはない。
 ……そうだ。空虚の中、グレンがいそうな方向に、叫ぶ。
「今は離れるけど、また、戻ってきても、良いよね」
 聞こえないはずの返答に、フィンは静かに微笑んだ。
(墓参りアンソロジー墓参りアンソロジー《Epitaph》寄稿作品『戻る場所は』スピンオフ作品)


還る期節に
 前触れは、全く無かった。
 気付いた時には、フィンの魂は、宿っていたはずのグレンの胸から去ってしまって、いた。
 理不尽な理由で無残に殺されたフィン。そのフィンの、魂だけでも。そう念じながら走った冷たい大地を覚えている。やっと見つけたフィンの魂と共に、グレンは生まれ育った故郷を離れ、仲間を見つけ、新しい生活を始めた。そのことに、フィンは安心したのだろう。それでも。
 俯いて、涙を堪える。目に映った小さな芽吹きに、グレンははっと胸を突かれた。そう。もう、春。だからフィンは、グレンの元を去った。……新しい命として、生まれ変わるために。
「いつでも、戻ってきて良いよ」
 だから。虚空を見上げ、グレンはそっと、呟いた。
(墓参りアンソロジー墓参りアンソロジー《Epitaph》寄稿作品『戻る場所は』スピンオフ作品)


 

(終)
2016.3.5.  風城国子智(作者の現状と若干の注意)

WindingWind 風城国子智