砂糖菓子の人

 その人と会うのは、僕が寝込んでいるときだけ。

 胸をも覆う白い前掛けを着けていて、長い髪を一つに結んでいる人。熱っぽい額を撫でてくれる冷たい手にも、翻す度に夏の草と同じ匂いがする袖口にも、苦い薬の後に食べても良いよと枕元に置いてくれる砂糖菓子の入った小さな紙袋にも、僕は、父や母に対してとは異なる、好意と言っていい感情を抱いていた。

 成長するにつれ、熱を出すことも少なくなり、当然、その人は僕の前に現れなくなった。
 地主の次男だった僕は、都会の大学で勉学に励んだ。
 そして。

「大きく、なったね」
 枕に頭を預け、僅かに微笑むその人を、静かに見下ろす。
 砂糖菓子の入った小さな紙袋を、僕はそっと、その人の枕元に置いた。

(終)
2016.9.3.  風城国子智(作者の現状と若干の注意)

WindingWind 風城国子智