星明かりの下で

「星、綺麗だね」
 そう呟いた、鎧姿の小さな背を、睨む。何を暢気なことを。そう言おうとして、唇を閉じたのは、目の前の少年の実力を、知っているから。街道沿いで盗賊行為を働いていたユエ達の一団を下したのは、領主であるこの少年。盗賊団を、領主の遊軍に仕立て上げたのも。
「敵は本当に、夜襲を?」
 気を取り直し、主君である少年に、小さな声でそう、尋ねる。頷くより先に、少年は、星明かりの向こうを指さした。確かに、自分達以外の者が、蠢いている。
 少年がユエ達を信頼した理由は、分からない。だがそれでも、信頼には応えるべきだ。だからユエは、襲い来る敵の前に躍り出た少年より先に、僅かな明かりに刃を光らせたその影を屠った。

(終)
2015.10.3.  風城国子智(作者の現状と若干の注意)

WindingWind 風城国子智