300字SS 2023年5月

毎月300字小説企画参加作品です。
(お題:待つ)

いつまでも、待っている

「私が大きくなるまで、待っていて」
 ラドの骨張った手を柔らかい手で掴んでそう言った少女は、ラドにとっては一瞬で、美しい乙女に成長した。そして。やはりラドにとっては一瞬で、ラドの元から去っていった。
 いつまでも、待っている。彼女が眠る墓に、彼女が好きだった花を供える。花のような君に、永遠を生きるという罪を背負った自分は不釣り合いだから、君の愛を無碍にしてしまったことも何度もある。でも、それでも。……待っている。また、自分の前に、生まれ変わった君が現れるのを。それが、今の自分の、たった一つの希望。乾いた頬を流れた、久し振りの涙を、ラドは乱暴に、生きていた頃の彼女が何度も触れてくれた手の甲で拭った。

2023.5.6. 風城国子智