300字SS 2020年12月

Twitter300字SS参加作品です。
(お題:眠る)

二人で二度寝

 毛布の隙間から出した鼻先を、即座に引っ込める。
 冷たく薄暗い空間の向こう、しっかりと閉じた雨戸の隙間から漏れていたのは、いつになく眩しい光。外は、きっと雪。こんな寒い日は、暖かい毛布の中に居た方が良い。小さな身体を更に小さくしながら、模糊は、横で丸くなって眠る禎理の柔らかい頬に自分の頬を擦り付けた。
「おはよう、模糊」
 穏やかな瞳で模糊を見つめた禎理が、先程の模糊と同じ動作で毛布の外を確かめる。
「外寒いし、昨日の怪我も痛いし、今日は休みにしようか」
 そう言いながら、小さな魔物である模糊の黄色の毛を優しく撫でる禎理の瞼が、ゆっくりと閉じていく。緩やかに動く禎理の胸に顔を埋め、模糊もゆっくりと目を閉じた。

2020.12.5. 風城国子智