300字SS 2020年10月

Twitter300字SS参加作品です。
(お題:選ぶ)

選び抜かれた

 大学時代、一緒に暮らしていた友人は、キャベツ一つ買うにも延々と悩んでいた奴だった。
「店で売ってるキャベツなんて、どれも一緒だろ」
「同じ値段なら、なるべく美味しそうなものを買わないと」
 巻きが固くて重いものが良い。丸いキャベツを片手に一つずつ乗せて重さを比べる友人に、分からないレベルで肩を竦める。食べられるのなら、何でも同じ。自分はそう思うが、友人はそう思っていない。その認識の違いが新鮮で、買い物にはいつも、なんだかんだと理屈をつけて一緒に行っていた。
「これが良いかな」
 ようやく、キャベツを籠に入れた友人が、次の売り場へと足を運ぶ。
 その晩、友人が作ってくれた野菜炒めは、確かに、美味しかった。

2020.10.3. 風城国子智