300字SS 2022年8月

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(お題:石)

宝石になってしまった仲間

 朝起きると、同室で寝起きしている冒険仲間、剣士のラドが宝石になっていた。
 あいつにしては、綺麗な石だな。ラドのベッドに転がっている小ぶりな石を手に取ってみる。しかし透明な青色は、あいつには似合わない。どんな場面でも冷静に敵を屠っていくあいつに似合うのは、血のような濁った赤だろうに。
 この石、どうしよう? 何も言わない宝石を、隅から隅まで眺める。磨いて首飾りに加工してもらえば、高く売れるかもしれない。いや、それでは、魔法戦士であるアキを補助してくれる剣士がいなくなってしまう。やはり、ラドを宝石にしてしまった呪いを解いた方が、自分の利益になる。小さく微笑むと、アキは宝石をポケットにしまった。

2022.8.6. 風城国子智

石投げ練習中

 友人オーレリアンが投げた石が、遠くの的に当たって澄んだ音を立てる。
 あいつ、こういうことだけは上手だな。横にいたエリゼに照れたような笑みを向けた友人に、胸が疼く。剣技は普通、勉学は落ちこぼれに近いオーレリアンだが、弱いものはしっかり守り、そのくせ逃げ足も速い。その矛盾に、エリゼは好意を持っているのだろう。
「やめとけ」
 手の中の石をオーレリアンの方に投げかけたレクスの腕を、石投げの師匠、酒場の主人ルーファスが止める。
「あの二人がこれ以上親密になるの、見てられるか?」
 確かに、エリゼを庇うオーレリアンは見たくない。にやりと笑ったもう一人の友人、チェスラフの言葉に、レクスは石を握りしめた腕を降ろした。

2022.8.6. 風城国子智